真夏くんは自分の前にアイスを置いて、軽々といった様子で蓋を開けると、それを私の前に丁寧な動作で置いた。



(あぁ、真夏くんのままだなぁ)



そう思ったら、嬉しかった。



真夏くんは、私が物心ついた時からすでにそばに居た近所のお兄ちゃんだった。

同じマンションで生まれ育った私達。

よく一緒に遊んでもらった。



真夏くんは物静かで。

小さな頃から、丁寧な人だった。



物に対しても、人に対しても丁寧に接する人で、そのせいで動作がゆっくりになるから、「トロい」とか「ノロマ」とか言われてしまうけれど。

私には輝いて見えた。



言葉を選んで真夏くんが話してくれるから、自分がお姫様になったみたいな気持ちになる。



大きくなると、その丁寧さが物事すべてを肯定しているようで。

安心した。

憧れた。

好きでしかなかった。



「……会いたかっただけだよ」
と、私は努めて何でもないふうに話す。



「真夏くん、どうしてるのかなって思っていたから。今、大学生なんだよね?」