(いいの?)



そんなふうに笑ってくれたら。

なんでも上手くいきそうな気すらしてくる。



「優しいね」



真夏くんに向けて呟いたけれど、本人には聞こえていなかったらしい。

それでも全然良いんだけど。






サングラスをかけて外に出ようとしたら。



「オレの帽子もかぶる?」
と、真夏くんがキャップを私の頭にのせた。



「えっ? いいの?」

「うん。いいよ。好きに使ってね」



嬉しくなって、キャップをかぶり直した。

サングラスとキャップの両方は、いかにも芸能人ですって宣言しているみたいだったから。

私はサングラスのほうを外した。







お目当てのお肉屋さんは、真夏くんのアパートからほんの少し歩いた先にある、商店街の中にあった。



「いらっしゃい! あら、犬飼くんじゃない」



お肉屋さんのおばさんが、真夏くんを見て目を細める。



「こんにちは。コロッケが食べたくて来ました」