「ありがとう」
『でも急だね? 何かあるの?』
「うん。小春だから教えるけどさ、キスしたいんだよね」
『…………』
小春が黙った。
「え? 聞こえてる? キスしたいんだ」
『いや、繰り返して言われても。ちょっと引いていただけだから、聞こえているし』
「会ったら、キスしてもらえるかな?」
『知らないよ!』
小春が照れているんだとわかり、
「あ、ごめん」
と、謝った。
電話を切ると、小春からメッセージが届いて、きちんと住所を送ってくれた。
《よくわからないけど、頑張ってね》
と、メッセージもくれた。
やっぱり好きだな。
そう思った。
個室から出て、手洗い場の壁に設置されている鏡を見る。
大丈夫。
私なら、なんとかやり遂げられるはず。
だって。
真夏くんのこと、こんなに好きなんだもん。
鏡の中にうつる自分は。
どこか自信のなさそうな表情で。
私は首を振り、
「大丈夫!」
を繰り返した。