「帰るの?」
と、真夏くんが聞いてきた。
「うん、もう帰らないと」
私は身支度を整えて。
窓のそばに行った。
「真夏くんのこと、これからも見守っていてね」
と、多肉植物の寄せ植えと豆苗に話しかける。
束の間だったけれど。
この部屋で過ごした三日間は、宝物みたいな時間だったな。
十六歳の夏が全て詰まったみたいな。
素敵な時間。
真夏くんを振り返って見ると、なんとなく寂しそうに見えた。
……もう、可愛いな。
「また絶対に来るからね」
「うん」
「そしたらまた、ゴロポテコロッケを食べようね」
「うん」
「川原にもまた行きたい」
「そうだね」
そう言って、私は真夏くんに近寄り。
めいいっぱい抱きしめた。
「……すみれちゃん、応援しているからね」
「うん、真夏くんのおかげで、不安が減ったから大丈夫だよ」
「それなら良かった」
「また不安に負けそうになったら」
と、私は真夏くんの顔を見た。