[ピンポンパンポーン]

 昼休みのにぎやかな学校に、ディナーチャイムの音色が割って入る。

「ついに来た……!」私は小さくつぶやいた。

 教室のざわめきが小さくなるのを見計らったかのように、聞き慣れた放送委員の声が響く。
 
[選挙管理委員会より、今年度の生徒会長選挙の立候補者が発表されました。2年3組の牧野夕翔(まきのゆうと)さん、2年1組の立花琴葉(たちばなことは)さん、以上2名です。候補者は、本日の放課後、生徒会室に集合してください。くり返します。選挙管理委員会より――――]

 ほ、ほんとに立候補、できたんだ! 私の心臓は、さっきからバクバクしっぱなしだ。
 そう、私こそが立花琴葉。この桃崎学園中等部の生徒会長を目指している。

 「えー! 牧野くんが会長に!?」
 「王子の魅力が、他の学年にも知られちゃうよ―!」

 いつの間にか放送が終わったらしく、教室がにざわめきが戻っていた。
 クラスメイトは、私のライバルとなる牧野くんの話で盛り上がっている。

 牧野くんが立候補するのは、意外だったな。
 クラスメイトはいつも「いつもふわふわしててかわいい~!」とか、「優しい王子さま〜!」とか言っている。
 かくいう私も、ぼんやりヒツジ系だなって勝手に思っていたんだ。
 だから、全校生徒を引っぱっていく会長になろうとするなんて、考えもしなかった。

「でもでも、牧野くんが会長になるなんてね」
「ねー! あたし、鳥居くんが立候補すると思ってたよ」

 クラスメイトも、私と同じことを考えているようだ。
 いや、牧野くんが会長になると思っているところをのぞいて。

 誰がライバルでも、私の気持ちは変わらない。
 私は私の夢を叶えるために、この学校の生徒会長になるんだ!