スタジオの外に出て、玄関の階段のところに座った。
 タッキーとキーボーも横に座った。
 真冬の深夜の空気は冷たく、息が白く濁った。

 ベスが一度建物の中に戻り、何かを持って帰ってきた。
 小型のカセットレコーダーだった。
 上着のポケットから取り出したカセットテープをセットして再生ボタンを押すと、イントロが流れてきた。
 大好きな曲だった。
『ハイウェイスター』
 しかし、ディープパープルの演奏ではなかった。

「あっ」

 思わず大きな声が出た。
 大学祭の時の演奏だった。
 大勢の観客を前に乗りに乗って速弾きを繰り出したあの演奏だった。
 エンディングでジャン♪ と決めると、物凄い歓声と拍手が聞こえてきて、冷気の中なのに体が熱くなった。

「次はこれね」

 ベスがカセットを入れ替えた。

「あっ」

 イントロを聞いて、また大きな声が出た。
『ロンリー・ローラ』だった。
 デモテープを作った時の演奏だった。
 リラックスして気持ち良くギターを弾いていた姿が蘇ってきた。

「これを作った時の気持ちで弾けばいいんだよ」

 なっ、というような表情でベスが肩を揉んだ。
 すると突然タッキーが立ち上がって3人に立つよう促した。
 そしてバンドを組んでいた時のように輪になると、タッキーが手を前に出してその上に3人が手を乗せた。

「ロケンロール!」

 真っ暗な空に向かって同時に手を上げた。