ホテルを出て5分ほど歩くと、目的の建物に着いた。
 レコーディングスタジオだ。
 無機質な外観が近寄り難い雰囲気を漂わせていた。

 正面ドアの前に立った。
 ガラスドアに全身が映っていた。
 ギターケースを持つ姿が様になっていると思った。

 大丈夫だ! 

 言い聞かすように頷いて一歩踏み出すと、自動ドアが開いた。
 中は薄暗かった。
 間接照明が独特のムードを醸し出していた。
 それは、妥協を許さない異次元の意志を放つプロフェッショナルの気魂(きこん)のように感じた。