次の日、改めて礼を言うために店を再訪した。
 しかし彼女の姿を見つけることはできなかった。

 今日は休みかな? 

 帰りたかったが、席に座ってしまったのですぐに出るわけにもいかず、テーブルにやって来た不愛想な若い男性に『皿うどん』と告げた。
 そして、メニューと一緒に置いてあった観光チラシのようなものを手に取った。
 長崎の名所と名物が紹介されていた。
 それを見ながら食べていると、長崎に来てから観光らしきことを一度もしていないことに思い至った。
 土日を含めて仕事ばかりしていたのだ。

 行ってみるか、

 役目を果たせなかったお礼用の菓子折りを持って長崎駅前から路面電車に乗り、終点一つ手前の大浦天主堂駅で降りて坂道を上った。
『グラバー園』に来たのは初めてだった。
 長崎港が一望できる素晴らしい眺めに目を見張った。