今だ!

 彼女がレジに向かっていた。

 早くしなければ、

 急いで立ち上がって、レジの方へ走るように足を進めた。
 その時、目の前のテーブルの若い男性が急に立ち上がったので、とっさに避けた。

 痛っ! 

 向こう(ずね)をテーブルの脚の角に思い切りぶつけてしまった。

 グ~、

 かなり痛い。

 グ~~、

 向こう脛に手を当ててうずくまった。

「大丈夫ですか?」

 レジ対応が終わった彼女が心配そうに声をかけてきた。

 大丈夫じゃなかった。
 返事ができなかった。
 すると彼女はどこかに行き、すぐに戻ってきた。

「これで冷やしてください」

 保冷剤だった。
 それをタオルに包んで持ってきてくれたのだ。
 受け取って患部に当てると、腕を取って椅子に座らせてくれた。

「しばらくここでお休みになってください」

 向こう脛を心配そうに見ながら、彼女が気遣ってくれた。

「ありがとうございます」

 痛さに顔をしかめながらも、できるだけ丁寧に礼を言った。