須尚正 

 秋晴れだった。
『くんち晴れ』といっても過言ではない雲一つない快晴だった。
 1634(寛永十一年)に始まったとされる諏訪神社の秋季大祭である『長崎くんち』は、毎年10月7日から9日までの3日間開催される。
 その語源は、旧暦の9月9日を重陽(ちょうよう)の良き日として祝う中国の風習が伝わったことから「9(くにち)」を「くんち」と読んで祭礼日を意味したと言われているが、現在では華やかな奉納踊りを見るために県内外から多くの人が訪れる観光の目玉となっており、長崎市の経済に大きく寄与する祭りとなっている。

 その初日に早起きをして夜明け前に会場に行ったのだが、前の方で見えるかなと思ったら大きな間違いだった。
 前日から場所取りをしている人も多く、最後列を確保するのがやっとだった。
 しかし他の日に変更する選択肢はなかった。
 観覧券は既に売り切れていたので、無料で見ることができる初日しかチャンスがなかったのだ。