MOGAMIZは秋の大学祭でデビューを果たした。
 屋外ステージにピアノを2台並べて、ショパンの曲をジャズ風にアレンジして演奏した。
 1曲目は自分がリードを取る『ポロネーズ〈軍隊〉』で、2曲目は笑美が単独で弾く『子犬』、3曲目の『幻想即興曲』は連弾による速弾きを披露した。

 弾き終わった瞬間、どよめきが起こった。
 と同時に拍手が沸き起こり、指笛がそれに重なった。
 信じられないほどの反応だった。
 鳥肌が立って何がなんだかわからなくなった。
 それは笑美も同じようで、呆然とした様子で鍵盤に手を置いたまま固まっていた。

「立って!」

 部長の声で我に返った。
 慌てて立ち上がって笑美を促して2人でお辞儀をすると、勢いを取り戻した波のように拍手が押し寄せてきた。