うな垂れて家に帰ったが、当然のように食欲はまったくなく、夕食を食べずにベッドに横になった。
 演奏レベルをもう一段引き上げないといけないという現実に加えて、金額の件が重くのしかかっていた。
 努力は自分で出来るが、お金はそうはいかない。
 親に頼らない限りなんともならないのだ。
 天井に目をやると、1,000万円という文字が浮かんで見えた。
 見当もつかない金額だった。

 寝返りを打った。
 その途端、「家が裕福だったら」という声が漏れた。
 本音だった。
 本音だったが、それを吐いた自分に強い嫌悪が襲ってきた。
 小さい頃からピアノを習わせてもらって、今は授業料の高い薬学部に行かせてもらっている。
 こんなに恵まれているのにまだ多くを望んでいる自分が恥ずかしくなった。

 わたしって最低だ……、

 思い切り唇を噛んだ。