茂上笑美 

 大学院に進んで修士を、アメリカに留学して博士号を、という計画を彼から聞いた時、そのチャレンジに心から賛同した。
 それに、しばらくの間離れ離れになったとしても、それで2人の関係が終わるはずはないと信じていた。

 笑美が大学に入学して彼と結ばれた時、彼は「君を世界一幸せにする」と言ってくれたのだ。
 それはプロポーズの言葉そのものだと思った。
 その時は心が震えて何も言えなかったが、一生のパートナーとして彼と歩むことは自分にとって最高の幸せであると信じることができた。

 彼はベッドの中で腕枕しながら自らの置かれた立場を話してくれた。
 最上製薬の跡継ぎであり、それを全うしようとしている覚悟を知った。
 それ以来、彼と過ごすこれからの長い人生を常に考えるようになった。
 それは夫婦という側面だけでなく、社長夫人という立場に思いを寄せることでもあった。