1週間後、
 エレガントミュージック社に出向いた3人は、神妙な面持ちで轟に向き合った。

「わかりました。残念だけど仕方が無いわね」

 彼女があっさりと諦めた。
 少しは引き止めてくれると思っていた3人は顔を見合わせたが、今更どうしようもないので「済みません」と謝った。

 すると彼女は苦笑いのような表情を浮かべたあと、「まあ、縁がなかったということで」と言って何故かさっぱりとしたような表情に変わった。
 その時、同席していた男性社員が彼女に声をかけた。

「このポスター、無駄になっちゃったね」

 彼は試作段階のようなポスターを手にしていた。
 そのポスターに写っていたのはエレガントミュージック社所属の中では最も人気のあるバンドで、全国ツアーを告知するものだった。
 しかしそれだけではなかった。
 そのポスターの下のスペースには、『期待の新進バンド「ビフォー&アフター」初登場!』と書かれてあった。

 それを見た瞬間、アッ! という声が3人同時に漏れた。
 しかし、そんな様子を気にもしないように「もういらないから」と言って破るような仕草を彼女がした。

「そうだね」

 彼は手に持ったポスターを破ろうとした。

「待ってください」

 タッキーがテーブル越しに彼の両手に飛びついた。
 タッキーが彼の手を封じている間にベスが彼の指を一本一本緩めていった。
 それを見たキーボーがゆっくりとポスターを下の方に引っ張った。
 彼の手からポスターが離れて、キーボーの手の中に納まった。
 丸まったポスターを3人でゆっくり広げて、改めて下のスペースを凝視した。
『期待の新進バンド「ビフォー&アフター」初登場!』
 3人が轟を一斉に見て詰め寄った。
「やります。やらせて下さい。お願いします」