すぐに手紙を送った。
「お目にかかって今後のことを打ち合わせしたい」と書いた。
 彼らがどういう受け止め方をするのかわからなかったが、とにかく会ってみなければ何も進まない。
 今後一緒にやっていくためには、曲の良さや演奏力に加えて人柄も重要なポイントになるのだ。
 
 10日後、3人の若者と会った。
 彼らは自己紹介をしたあと、ニックネームを付け加えた。
 名前がユニークだったし、ニックネームは覚えやすかった。
 第一印象は○だった。

 早速話を切り出した。
「1年間、前座で腕を磨いてください」
 その途端、3人の口が開き、茫然としたような表情になった。
 誰も何もしゃべらず、まるで声を失ってしまったかのように無音が続いた。

「前座ですか……」
 黒髪長髪が、やっと、という感じで声を出した。
 気持ちはわかったが、甘いことを言うわけにはいかなかった。
 釘を刺すように言い含めた。

「アマチュアバンドをいきなりレコードデビューさせることはしません。知名度のないバンドのレコードを出しても売れるはずがないからです。だから、有名なバンドの前座で全国を回り、少しずつ知名度を上げていくことが大切なのです。それをする気がないのなら、この話は終わりです」

 すると彼らは戸惑ったような表情を浮かべた。
〈終わり〉という言葉に少なからずショックを受けているようだった。

「前座の期間は……、どれくらい……、ですか……」

 黒髪長髪が恐る恐るという感じで訊いてきた。

「わかりません。観客の反応次第です。反応が良ければ短期間でデビューできるかもしれませんが、反応が悪ければ前座の仕事さえなくなると思ってください。この世界はそれほど厳しいものであると認識してください」

 3人が顔を見合わせた。
 表情は曇天のようだった。

「少し考えさせてください」

 絞り出すような声が黒髪長髪から漏れた。
 スキンヘッドと茶髪長髪が首を縦に振った。

「よく考えて。覚悟があるかどうかをそれぞれの胸によく訊くことです。中途半端な覚悟でやったら必ず失敗するということを、頭に叩き込んでください」

 もう一度強く念を押した。