デモテープをレコード会社に送った。
 その数は10社以上だった。
 しかし、どこからも返事はなかった。
 待てど暮らせどなんの連絡もなかった。

 全国のアマチュアバンドが自作曲を録音してレコード会社へ送ると自動的に新人発掘部門や企画部の担当者に届けられることになっているらしいが、その数が半端ではないことは知っていた。
 だから、担当者が聞くことができるデモテープはほんの僅かだということも知っていた。
 ほとんどが開封されないまま段ボールの中に放り込まれていると聞いたこともある。
 確かに、どこの馬の骨ともわからないアマチュアバンドのデモテープを積極的に聞こうとする担当者はいないかもしれない。
 しかし、余りにも遅すぎると思った。
 まさか段ボールに詰め込まれてほったらかしにされていることはないだろうが、日が経つにつれて焦りの気持ちが強くなっていった。
 デモテープの出来に自信があっただけに、その反動は強かった。