翌日の夜のニュースで海難事故の続報を見た。
 生存者を見つけることができなかったと伝えていた。
 船は沈没してしまっていた。
 白い波が立つ海面が映されていたが、そこに命の気配を感じることはできなかった。
 捜索は続いていたが、絶望的だとアナウンサーが告げていた。
 絶望的という言葉に心が凍った。
 しかし、もうどうしようもないということも事実だった。
 白い波頭(はとう)が踊る画面を見ながら、彼女はどうしているだろうかと思いを馳せた。
 すると顔を両手で覆った彼女の姿が浮かんできた。
 嗚咽が耳の奥でこだました。
 でも諦めてはいないはずだ。
 婚約者が必ず生きて帰ってくることを信じているはずだ。
 祈り続けているはずだ。
 そうであって欲しい。
 テレビに映っている北の海に向かって手を合わせた。