学食に行こうかと思ったが、彼らと顔を合わすかもしれないと思うと足は向かなかった。
 大学を出て5分くらい歩いたところにある定食屋に行った。
 安くてボリュームのある人気の店だ。

 店に入るとサラリーマンや学生で賑わっていたが、それでも入り口近くのカウンター席が空いていたのでそこに座った。
 迷わず生姜焼き定食を頼んだ。
 それが運ばれてくるまですることもないので、天井近くに備え付けられたテレビをぼんやりと見ていた。
 政治や経済のニュースをやっていた。
 興味のないものばかりだった。

 それが終わると、いきなり荒れた海が映し出された。
 海難事故のニュースだった。
 オホーツク海で漁船が転覆したらしい。
 漁船が大きな横波を受けて転覆したのだという。
 直ちに海上保安本部の飛行機が現場に向かって捜索を始めたが、近くに救命いかだの姿はなく、浮き輪も救命胴衣も発見されていないという。
 救助のために巡視船が向かっているが、到着するまでにかなりの時間を要するので、救助のために残された時間は多くないとアナウンサーが深刻な表情で伝えていた。