3人と別れたあと、家に閉じこもった。
 大学に行く気がまったくしなくなった。
 しかし、家に居ても何も手に付かず、ほとんどの時間ボーっとしていた。
 卒論の仕上げに取り掛からなければならなかったが、集中することはできなかった。
 それに、断っておきながらバンドへの未練を断ち切れないでいた。
 あんな別れ方をしたままで終わらせたくはなかった。
 悶々とした日が過ぎていった。

 卒論にまったく手が付かなくなったので、ギターを弾くしかすることが無くなった。
 アンプに繋ぐわけにもいかないので、しょぼい音しか出せなかったが、それでも机に向かっているよりはましだった。
 しかし、気がつくとバンドの持ち歌を弾いていて、これは逆効果になってしまった。
 彼らとの思い出が次々に浮かび上がってきて切なさが募ってきた。
 何をやってもダメだ……、
 ギターを置いてベッドに倒れ込むと、天井のクロスの小さなシミが見えた。
 ため息が出た。
 
 そんな日が10日ほど続いたあと、久し振りに部室に寄った。
 ドアには鍵がかかっていた。何故かほっとした。
 3人の声が聞こえたらドアを開けずに帰るつもりだったからだ。

 鍵を開けて中に入った。
 部室の中は何も変わっていなかった。
 タッキーの定位置に座ると、彼のニオイがした。
 ベスの定位置も、キーボーの定位置も一緒だった。
 でも、自分の定位置にそれはなかった。
 完全に消えていた。
 ここに居場所はないと思うと、『お払い箱』という言葉が頭に浮かんだ。
 すぐに立ち上がって、部室をあとにした。