ドアをノックしてから静かに入室した。
 丁寧にお辞儀をして、
「須尚正です。よろしくお願い致します」と練習通りの言葉を口にして直立不動で顎を引いた。
 着席を勧められたので、浅めに腰を掛けて膝の上に両手を置いた。

 面接官は2人だった。
 見比べて、その違いに驚いた。
 同じ会社の社員とは思えない対照的な外見をしていたのだ。

「バンドやってるって書いてるけど、どんなジャンル?」
 レイバン型の眼鏡をかけた30代くらいの面接官だった。
 ウェーブのかかったロングヘアが肩近くまで伸びていた。
「フォークロックです。主にオリジナル曲を演奏しています」
 ホー、というように口を突き出した。
「君が曲作ってるの?」
「はい」
 短く答えて背を伸ばし、顎をぐっと引いた。
「プロになる気はないの?」
「はい。プロとして飯が食えるようになるのはそんなに簡単ではないと思っています」
 今度は口に出してホーっと言って、レイバン男が横の面接官を見た。