2人目が呼ばれた。
 名前は早稲田だった。
 彼も落ち着いていた。
 部屋に入って1分も経たないうちにまたもや面接会場から笑い声が聞こえてきた。
 2人目も盛り上がっているようだ。
 それを聞いていると一層緊張が高まってきた。
 自分の時もこんなに盛り上がるのだろうかと焦りが募ってきた。
 しかしこんな状態ではだめだと思って心を落ち着かせようとした時、隣に座っている2人の小声が耳に入った。

「おかしくないか?」
 声のした方を見ると、大柄の学生が顔をしかめていた。
「なにが?」
 小柄な学生が首を傾げた。
「何がって、面接順って普通、アイウエオ順だよな。なのに、1番目が湯島で2番目が早稲田って……」
「あっ、本当だ」
 大柄の指摘に小柄が大きく頷いた。
 そして、小柄が大柄の顔を指差して、
「お前が青山で、俺が小金井だから」と言って、こちらのネームプレートを見た。

「3番目からはアイウエオ順か。ということは……」
「最初の2人は別枠かもしれないな」
「別枠?」
「ああ。間違いない」
「それって」
「コネだよ、コネ。間違いなくコネ」
「嘘だろ。じゃあ、この面接って形だけなのかよ」
「ああ。その可能性は高いな。でもな、それだとあとでばれたらヤバいから、少なくとも1人は正式な面接で取るんじゃないかな」 
「1人か~」
 2人は顔を見合わせてため息をついた。