気がつくと家に辿り着いていた。
 ハッとして郵便ポストの中を見たが、何も入っていなかった。
 しかしそのことになんの感情も起きなかった。

 インターホンを鳴らしても応答はなかった。
 母は買い物にでも行ったのだろう。
 ジーパンのポケットから鍵を取り出してドアを開けると、しんと静まり返った玄関が迎えてくれた。
 すると、先程の疑問が蘇ってきた。
 そして、「ご愁傷様」という声も。
 一瞬立ち尽くしたが、思い切り頭を振って台所へ直行して冷蔵庫を開け、牛乳パックを取り出した。
 
 持つと軽かったのでコップには注がず、容器に直接口を付けて飲み干した。
 そこで手が止まった。
 いつもは中をゆすいできれいにした上で容器を開いた状態にするのだが、今日はとてもそんな気が起こらなかった。
 そのまま流しに置いて居間に行った。
 
 テーブルを見ると、郵便物やチラシが無造作に置かれてあった。
 もしかしてと思って手に取ったが、待ち焦がれている物は見つからなかった。
 すぐに出て階段を上がった。