レコード会社も例外ではなかった。
 というより、ほぼ全滅といった状態だった。
 軒並み新卒採用の中止を決定したのだ。
 先行き不透明な中で増員に踏み切る企業があるはずはなかった。
 しかし、幸運にも若干名募集というレコード会社を1社見つけた。
 エレガントミュージック社。
 新宿区に本社がある新興レコード会社で、洋楽に強みを持ち、ここ数年ヒット曲を連発していた。

 応募が殺到するだろうし、大変な競争倍率になるのはわかっていた。
 しかし、躊躇うことはなく、構想中の卒論の概要を履歴書に添付して速達で郵送した。
 そしてその足で神社に行って書類選考通過を願って祈った。
 何度も祈り続けた。

 履歴書を送った翌日から毎日郵便ポストを覗き続けた。
 そんなに早く返事が来るはずはなかったが、そうしないわけにはいかなかった。
 電話が鳴ったら真っ先に受話器を取った。
 授業などで外出した日は必ず母親に確認した。
 しかし、電話も手紙もない日が続いた。
 
 締め切りから1週間経った頃、ダメだったのかもしれないと思い始めた。
 希望は萎んでいき、心が重くなり、夜中に何度も目が覚めるようになった。
 そのうち食欲も無くなっていった。