須尚正 

 最上と会った翌日、帰国していたキーボーから会いたいという電話があった。
 さっそくREIZを伴って彼のいるホテルへ向かった。

 会うなり、挨拶もそこそこに彼は本題に入った。

「難聴救済ミュージックエイドを立ち上げたい。協力してくれないか。大規模なライヴを日米欧で開催して、その収益を貧しい国の聴覚障害患者救済に使いたいんだ」

 燃えるような目だった。

「最上製薬の難聴治療薬NMEと骨伝導補聴器、超小型診断機器を買い取って、難聴患者や医師たちに無償提供を行いたいんだ。最上さんは原価で売ってもいいと言ってくれている。その上、3製品の利益の10パーセントを、難聴救済ミュージックエイドに寄付してくれるとまで言ってくれている。ありがたい話だ」

 それだけでなく、ビートローリングスとクイーン・クリムゾンの全面的な支援も取りつけてあるということだった。

 話を聞いて胸が熱くなった。
 音楽によって難聴患者を救う手助けができることは何よりも嬉しかったし、願ってもないことだった。
 それはREIZも同じようで、すぐさま全面的な協力を約束した。