運営にも知恵を絞った。
 徹底したリスナー志向と徹底したローコストオペレーションを考えたのだ。
 それは、パーソナリティー・ゼロというアイディアに結びついた。
 コマーシャルの時間を除けば音楽100パーセントのFM局として運営するのだ。
 これなら人件費を大幅に削減できるし、聞きたくもないパーソナリティーの話に煩わされなくてもいい。
 但し、放送されている曲名が知りたいというリスナーのために工夫を凝らした。
 それぞれの専門局のホームページに本日の放送曲リストを掲載したのだ。
 そこに放送時間と曲名を載せ、曲名をクリックすると、イントロが20秒だけ流れるようにした。
 リスナーはこれで確認できる。
 もちろん、各音楽制作会社の許可を得ることを前提とした。
 そして、その曲が気に入って購入したくなったら、CD購入とダウンロード購入が選べるような仕組みを作り上げた。
 その売上は即、各音楽制作会社に分配される仕組みと共に。
 
 選曲にも十分配慮した。
 エレガントミュージック社100パーセント出資とはいえ、自社が抱えるミュージシャンの曲を優遇することを禁止したのだ。
 もし優遇すれば、洋楽のすそ野を広げる試みに水をかけてしまう。
 だから、音楽制作会社色に染まっていない中立の音楽評論家を選び、専門局ごとに選曲委員会を設けた。
 そして、リスナーの立場に立った選曲を依頼した。
 中立性と公平性を重視したのだ。