プレゼンが終わると、轟は取締役たちを見回して、発言を促した。
 須尚は2人の強固な反対意見を覚悟して身を固くした。
 しかし、誰からも意見は出なかった。
 あの2人も口を堅く閉ざしていた。
 冒頭の深刻な報告が効いたのだろうか? 
 須尚はテーブルの資料に目を落としながらも耳をそばだてた。
 しかし、物音一つしなかった。

「ご意見はございませんか?」

 轟が再度発言を促した。
 須尚は顔を上げて取締役たちを見たが、誰の口も動かなかった。

「反対のご意見はありませんか?」

 轟はあの2人の方を向いて確かめるように問いかけた。
 しかし、彼らの口が開くことはなかった。

「反対のご意見がないということは賛成ということでよろしいですか?」

 多くの取締役が頷いた。

「それでは賛成の方は挙手願います」

 一斉に手が上がった。
 しかし、あの2人は手を上げなかった。
 やはり反対なのだ。
 一気に緊張が高まる中、轟が次の言葉を発した。