「売却シナリオを考えて」

「売却ですか?」

 思いがけない言葉に声がひっくり返ってしまった。

「そう。5年で回収できなかった場合には売却をしてマイナス額を圧縮することを付け加えるの。そうすればあの2人の態度も和らぐのではないかしら」

「なるほど……」

「その売却も完全売却と部分売却に分けて検討して欲しいの」

 轟が言うには、定款(ていかん)の変更や資本の増減、合併や営業譲渡、取締役や監査役の解任、解散決議ができる67パーセントを残す案と、決算の承認や取締役・監査役の選任、役員報酬の決定ができる51パーセントを残す案を併記したいのだという。
 つまり、33パーセント売却と49パーセント売却と100パーセント売却の3案について比較検討が必要だというのだ。

「わかりました。3案を併記したシミュレーションを準備します」

 飛び出すように社長室を出て、経営企画室へ向かった。
 再度彼らとシミュレーションを繰り返して最適解を導くのだ。

 今度こそあのあいつらに賛成と言わせてやる!

 全身の血が騒ぐのを抑えきれないまま経営企画室のドアを開けた。