翌週、日本洋楽振興会に出向いた須尚は必死になって理事長を説得した。
 これが最後のチャンスだと迫った。
 しかし、「出資する余裕はこれっぽっちもない」とろくに考えもせずに切り捨てられた。

「話には賛同するが、支援するのは難しいと言わざるを得ない。加盟各社は厳しい経営を強いられており、出資する余裕は本当にないんだ。知っているとは思うが」

「しかし、このまま何も手を打たなければ洋楽というジャンル自体が日本から消滅してしまいますよ。それでいいのですか」

 すると彼は腕を組んで天井を睨んだので、
「手遅れになってもいいんですか? 最後のチャンスなんですよ」
 と最後通牒を突きつけた。
 しかし、
「とにかく、お金がないんだ」
 と彼はネガティヴな声を投げつけてきただけだった。