更にその半年後、再度連絡があった。
 超小型化への目処がついてきたというのだ。
 説明してくれたのは冶金だった。

「日本の軽薄短小技術の凄さを実感しました。無理を承知でいくつかの企業に依頼したところ、そのうちの一社が引き受けてくれて、先日その試作品を届けてくれました」

 超小型機械の開発で世界最高水準の技術を持つ会社が最先端微細加工技術を用いて開発してくれたというのだ。

「これがその試作品です。まだ改良すべきところは多々ありますが、卓上型に比べてかなりの小型化が見えてきました。機能を最小限に絞ることにはなりますが、最終的にはタブレット型端末と同等の大きさにまでしたいと思っています」

 本体だけでなくプローブの小型化も視野に入れているという。

「遅くとも半年後には完成品に近い試作品をお見せできると思いますので、楽しみに待っていてください」

 音野と冶金の揺るぎない眼差しに心を射られた。
 その瞬間、堪え切れなくなった涙腺が全開になった。
 難民キャンプなどで苦しんでいる聴覚障害患者を救うための最後のハードルを乗り超える目処がついたのだ。
 最上の長年の夢がゴールテープを切ろうとしていた。