それから半年ほど経った頃、音野から連絡があった。
 卓上型が完成したというのだ。
 最上は喜び勇んで彼の元を訪れた。

「ジャジャーン」

 満面笑みになった音野がテーブルの上に置かれた白いシーツを取り払うと、パソコンより一回り大きなサイズの診断機器が目に飛び込んできた。
 落ち着いたグレーの筐体(きょうたい)と小型の超音波プローブが信頼感を醸し出していた。

「これから日米欧で同時に臨床研究を始めて、大型の診断機器との相関性を調べます。それで同等性が示されれば臨床現場で使えることになります」

「それって保険適応になるということ?」

「そうです。承認されれば保険適応となります。但し、新たな点数が付加されるのではなく、既存の内耳機能検査の一つとして請求できるようになると思います」

「それはどれくらいの期間が……」

 NMEの承認時期に間に合うかどうかが、最上にとっての最大の関心事だった。

「大丈夫だと思います。NMEは現在第三相の臨床試験中ですよね。早ければ新薬の申請前後、遅くても薬価収載される頃にはこの診断機器が臨床で使えるようになると思います」

 それを聞いて思わず歓喜の声が漏れた。
〈診断―治療―確認〉が一気通貫で出来る仕組みの目処がついたからだ。

「ありがとう」

 最上は深々と音野と冶金に頭を下げた。