大学祭が終了して1週間後、3人に呼び出された。

「えっ、留年?」

 余りのことに驚いたが、それを気にする様子はなく、3人はニヤッと笑った。

「このままバンドを解散するのは惜しいからね」

 何事も無いようにタッキーが言うと、ベスとキーボーがペロッと舌を出した。

「まさか……」

 その、まさかだった。
 彼らはわざと単位を落として留年するというのだ。
 そういえば、彼らが就職活動をしている様子を感じたことがなかった。
 余りのことにポカンとしてしまったが、それにしてもこんなことをして大丈夫だろうか? と他人事ながら心配になった。
 しかし彼らは平然としていた。
 留年するのが当然というような顔をしているのだ。
 何を考えているのだろうか? 
 と呆れたがなんかバカバカしくなって笑ってしまった。
 しかし彼らは笑わなかった。
 それどころか真剣な表情になったベスがとんでもないことを言い出した。

「プロになろうぜ」

 タッキーとキーボーの顔も真剣そのものだった。
 3人はプロになる決意を固めていたのだ。

「プロって……」

 戸惑いが首を横に振らせた。