書き終わると、彼女が高校生だということを告げられた。
 付属高校の軽音楽部に所属しているのだという。
 大学との合同演奏会を年に2回行っているのだが、1年前から合同演奏会の連絡係をすることになって、ちょくちょく打ち合わせに来るようになったのだそうだ。

「気づいたら準メンバーのような感じになっていて、時々こうやってピアノを弾かせてもらっています」

「ピアノが上手いだけじゃなくて成績も抜群だから、推薦入学間違いないしね」

 代表が自分のことのように自慢すると、彼女は謙遜するかのように首を振った。

「ところで、君はどこの学部?」

「あっ、はい、薬学部製薬学科です」

「へ~、笑美ちゃんの志望学部じゃん」

「あ、そうなんですね」

 すると彼女は頷いて、「先輩、よろしくお願いします」とまだそうなったわけでもないのに親しげな視線を送ってきた。

「こちらこそ」

 ほんの少し頭を下げたが、最上製薬の跡継ぎだということは言わなかった。