REIZの新アルバム発売記念ライヴが幕を開けた。

　当然のことながら会場は異様な興奮に包まれていた。
　幸運にもプラチナチケットを手にすることができた観客のボルテージは上がり続けていた。
　
　開演時間になった。
　真っ暗なステージにスポットライトが当たった。
　それも3つ。
　3人の顔が浮かび上がった瞬間、この世のものとは思えないほどの歓声が上がった。

　真ん中にキーボーがいた。
　その右横に立つ伝説のミュージシャンがマイクを握った。

「親愛なるKIIBOO、世界最高の録音エンジニアであるKIIBOOへ心から感謝を込めて」

　クイーン・クリムゾンのリーダーが謝辞を述べると、左横に立つビートローリングスのリーダーが花束を渡した。
　その途端、ひと際大きな歓声と拍手が会場を包み込み、受け取ったキーボーは輝くような笑みを浮かべた。
　海岸沿いにプラスチックごみを拾い集め続けている彼の顔は健康そうに日焼けしていたし、アルコール依存から脱した彼の体と肌は若者のような張りを取り戻していた。

　歓声と拍手が続く中、ビートローリングスとクイーン・クリムゾンの両リーダーは、花束を持つキーボーの両手を持ち上げた。
　その瞬間、耳をつんざくほどの歓声と拍手が巻き起こった。
　観客は全員総立ちになり、キーボーは感極まった。
　そんな彼をリーダー2人が支えていたが、歓声がピークを過ぎた時、2人がマイクを握り合った。
　そして、「今夜限りのスペシャルライヴが聞きたいか？」と会場に問うた。