日本より先にアメリカで発売することになった。
 発売元はエレガントミュージックUSA。
 エレガントミュージック社のアメリカ現地法人を設立したのだ。

 辞令を受け取った時、少なからず驚いた。
 代表取締役社長という肩書が与えられたからだ。
 まさか社長と呼ばれる立場になるとは思わなかったので、喜びよりも驚きの方が大きかった。

 しかしそれは日が経つに連れて重圧に変わった。
 社運をかけた挑戦の重さに押しつぶされそうになった。
 それでも本社の社長も轟も全面的にバックアップすると言ってくれたし、企画部担当を外れることになったので、覚悟を決めて背水の陣を敷いた。
 アメリカに家を借りて妻を呼び寄せたのだ。
 そして、失敗したら責任を取って辞表を提出する覚悟だと伝えた。
 人生を賭けた大一番が始まろうとしていた。