大学祭での演奏は大成功だった。
 まさかのアンコールを求められて舞い上がってしまった。
 しかしアンコール曲は用意していなかったので、『ビフォー&アフター』を再演することにした。
 すると、イントロを弾くなり歓声が上がった。
 それで一気に頂点に駆け上がった。
 ギターを背面に回して弾くアクロバティックなアクションを披露すると、ベスもベースギターをブンブン振り回しながら茶髪長髪を宙に暴れさせた。
 タッキーはドラミング中にスティックを指先でクルンクルンと回すパフォーマンスを大げさに見せつけ、キーボーは座っていた椅子を蹴飛ばして立ったままで演奏を続けた。
 右手の肘を鍵盤の左端から右端まで滑らすパフォーマンスも披露した。

 キメの時が近づいた。
 ベスに合図を送って同時に飛び上がり、同時に着地した。
 その瞬間、ジャン♪ という音と共にポーズを決めると、ウォーという地響きのような歓声が会場から押し寄せてきた。
 会場は総立ちだった。
 誰もが紅潮した顔で声を発していた。

 鳥肌が立った。
 体の奥から経験したことのない快感が押し寄せてきた。
 死んでもいい! と思えるほど気持ち良かった。

 ステージ中央に4人で並び、手を繋いでその手を上に伸ばした。
 そして、そのままの状態を保って90度体を折るようにお辞儀をすると、大きな歓声と拍手が起こった。
 それはスターに対する反応のように思えて、痺れるような興奮に襲われた。
 しかしそれはプレリュードでしかなかった。
 顔を上げた途端、歓声はヒートアップし、アンコールを求める声が津波のように押し寄せてきたのだ。
 もう我を忘れるほどだった。
 しかしアンコールに応えられるノリのいい曲は残っていなかった。
 アンコール、アンコールという合唱が続いたが、後ろ髪を引かれながらも控えのスペースに引っ込んだ。
 それでも、アンコールを求める合唱はいつ終わるともなく続いた。