その2週間後、REIZを連れてアメリカに渡った。
 サードアルバムの録音のためだ。
 と同時に、キーボーの卒業祝いをするためでもあった。

「卒業、おめでとう」

 キーボーに向かってシャンパングラスを高く掲げた。
 タッキーとベスもシャンパングラスを、そして、麗華と令がジンジャーエールの入ったグラスを掲げた。

「ありがとう」

 ホッとしたような表情でキーボーがグラスを合わせた。
 しかし、目は落ち込み、頬は削げ落ち、骨と皮だけの顔になっていた。

「ガイコツみたいだろ」

 自嘲気味に呟いた。
 誰も笑えなかった。
 彼の顔の変化は、クイーン・クリムゾン再結成アルバムに賭けるバンドメンバーの妥協なき要求と、それに応える完璧な仕事を物語っていた。
 1年以上もスタジオに閉じこもって妥協を許さない仕事をし続けていたのだ。
 どれほど過酷だったか。

「これからどうするんだ?」

「……まだ……、何も決めていない」

 ガイコツのような顔で呟いた。
 すると令が労わるように「ゆっくり、のんびりすればいいよ」と優しく声をかけた。
 キーボーは微かに笑みを浮かべて応えた。

「とにかく、音楽から離れる」

 その言葉には、開放感以上の寂しさが含まれているような気がした。