その後の観察で、投与を中止した高用量群は再生毛が抜け落ちることなく、太くなることもなく、状態が維持されていることが確認された。
 中用量群は、高用量群から半年遅れて毛の再生を認めた。
 低用量群はなんの変化も見られなかった。

「前臨床試験が間もなく終了します。NME高用量群は毛の再生後1 年間、その状態を維持していますし、毒性の問題もなんら認められません。本来なら、この結果を持って健常人による第一相臨床試験を始めたいところですが、骨格の似ている新規誘導体で発現した〈聞こえすぎによるショック死〉が気になります。慎重を期して、チンパンジーでの投与実験と作用機序の解明をすべきと考えますが、どう思われますか」

 考えるまでもなかった。
 慎重には慎重を期さなければならない。
 ショック死などという悲劇が起こってはならないのだ。
 全面的に賛成すると伝えた。