皆の興奮が落ち着くと、ニタスが今後の計画を話し始めた。

「この誘導体の薬効は遅効性だと思われます。なので、あとから合成した新規誘導体の時のように再生した毛が急に太くなるということはないと思われます。しかし、基本骨格が近似しているので、再生した毛が徐々に太くなる可能性が絶対にないとは言えません。そこで」

 ニタスは今後の実験計画を白板に記した。

・高用量群→投与を中止して再生毛に変化があるかどうか観察を続ける。
・中用量及び低用量群→投与を継続して再生毛が生じるかどうか見極める。

 最上はこの誘導体に『NME』という名を付けた。
 Nは誘導体を合成したニタス博士のN。
 Mは仮説を立てた最上のM。
 Eは最上の声に反応してくれたマウス「エミ」のE。
 そして、日本から愛情を送り続けてくれている笑美のEでもあった。