搭乗手続きを済ませて保安検査場の入口に向かおうとしていた時だった。
 大きく手を振る男性が見えた。
 最上だった。

「わざわざ見送りに来てくれたのか」

 彼は爽やかな笑みを浮かべて須尚を軽く抱きしめてから、REIZのメンバーと握手を交わした。

「元気でな」

「ありがとう。お前もな」

 先日と打って変わって最上は元気そうだった。

「必ずお前の耳鳴りに効く薬を創るからな」

「うん、期待している。朗報を待っている」

 そして、ちょっと躊躇ったが、敢えてキーボーのことを伝えた。
 昔のバンド仲間が難聴になっていることを。

「そうか、その彼も俺の新薬を待っているのか……」

 彼は大きく息を吸い込んだ。
 それは、自分の中に目いっぱいエネルギーを貯め込むかのようだった。

「またな」

「ああ、またな」

 最上とがっちり握手を交わしてから、搭乗口へと向かった。