日本に帰る日を迎えた須尚とREIZはワシントン・ダレス空港のロビーで出発の時刻が来るのを待っていた。

 ディズニーランドを堪能した麗華と礼はエネルギーに満ちていた。
 いや、全身からエネルギーを発散していた。
 帰国したらすぐにでもライヴ活動を始めたいと意気込んでいた。
 そしてそれは、おじさんミュージシャンたちも同様だった。
 タッキーとベスはニューヨークのジャズクラブ巡りで刺激を受けて何歳も若返ったように見えた。
 ライヴ活動がしたくてうずうずしているようだった。

 そんな前がかりになっている4人を牽制するように轟の危惧を伝えた。
 そして、「メディアに翻弄されて失速したミュージシャンを数多く知っている。お前たちにはそうなって欲しくない。じっくりやろう。いいな、じっくりだぞ」と念を押し、麗華と令の肩に置いた手にぐっと力を入れた。

「焦ってはいけない。じっくりと腰を落ち着けてやろう。腹八分目が丁度いいんだ。先は長いからな」

 2人は真剣な表情で頷いたが、横で聞いていたタッキーがぼそっと呟いた。

「俺たちは先が短いけど」

「コラ!」

 わざとキツイ目で睨むと、悪戯がばれた子供のような顔をして首をすくめた。