「なんていう曲?」

 ラジカセから流れる新曲を聞き終わったタッキーがこっちを見た。

「ビフォー&アフター」

「前と後か……」

「日本語で言わないでください!」

 顔をしかめると、ごめんごめんと右手を立てたが、
 すぐに「これ、いいじゃん」と言ってベスに顔を向けた。
 ベスはご機嫌な調子で「今年の大学祭で演奏しようよ」と言ってキーボーに顔を向けた。
 キーボーは異議なしというように大きく頷いた。
 
 6月に向けて練習が始まった。
 メンバーは変化を楽しんでいた。
 今までと違う曲が1曲加わっただけで、こんなにも大きなインパクトがあるとは思わなかった。
 熱に浮かれるように練習に没頭したせいか、演奏レベルは飛躍的に上がっていった。
 
 あっという間に5月最終週になった。
 大学祭へのカウントダウンが始まっていた。
 そろそろ演奏する曲順を決めなければならない。
 練習後に立ち寄った喫茶店で3人の話し合いを見守った。
 ところが何を思ったか、「演奏順はスナッチに任せる」と突然キーボーが言い出したので面食らった。
 しかしタッキーとベスが「了解」と言ってほぼ同時に頷いたので逃れられなくなった。
 何がなんだかわからないままコーヒーを喉に流し込んだ。