最上極 

 須尚と会った翌日、音野と待ち合わせてアメリカ聴音工学研究会の会場へ向かった。

 メイン会場に入ると、既に超満員で座席は一つも空いていなかった。
 立って見るしかなかったが、発表レベルの高さに目と耳を奪われ続けた。
 そんな中、更に釘付けになる発表が始まった。
 それは、従来のものよりも格段に導伝力の高いセラミックスについての発表で、音の伝達力が大幅に向上した次世代のセラミックス振動子の開発につながる可能性を秘めているものだった。

「これだ!」

 音野が興奮した声を発した。
 探し求めていたものに出会った確信に支配されているようだった。

「これがあれば開発中の骨伝導補聴器の性能が格段に向上する」

 興奮で顔に赤みがさしていた。

「それにしても……」

 音野は大きく首を横に振った。

「まさか日本人とは……」

 この研究成果について何も聞いたことがなかったという。
 日本の学界ではまったく注目されていなかったのだろう。
 発表者は関西工業大学・応用セラミックス研究所の冶金(はるがね)(みやび)副所長だった。