デビューシングル『サンライズ』を含む全10曲が完成したのは、録音を始めて1週間が経った時だった。
 予定の半分で済んでしまった。
 それも完璧に。

「さすがだな」

 コントロールルームでキーボーの肩を揉んだ。

「よせやい」

 彼は照れて、手を振り解いたが、
「軽く打ち上げでもするか」
 とグラスを上げる仕草をした。

 本当は頷きたくなかったが、断ることはできなかった。
 家人が寝静まったキーボーの家でグラスを合わせた。

 キーボーはいつになく饒舌だった。
 今回の録音作業に満足しているのだろう。
 須尚はひたすら聞き役に徹した。