少ししてドアが開いた。
 男性が現れたが、一瞬誰だかわからなかった。
 そのくらい風貌が変わっていた。
 寝不足が原因と思われる腫れた瞼、水気のないパサパサの白髪、そして、アルコール焼けしたような赤ら顔、自分よりも10歳以上老けて見えた。

「久しぶりだな」

 声はガラガラだった。
 アルコールとタバコにやられたような声だった。

「大丈夫か?」

 見ればわかるだろう、というようなに両手を広げた。

「急に済まなかった。でも、助かったよ、本当に」

 彼は頷いて、右肩に手を置いた。

「まあ、中に入れよ。うまいバーボンがあるから」

 彼は昼間からバーボンを呷っていた。

 大丈夫かな? 

 一気に不安になった。

 こんな飲んだくれに、ちゃんとした録音ができるのだろうか? 

 そう思うと、不安が増した。

 それを察したわけではないだろうが、何故か、ふっ、という感じでキーボーが笑った。

「先週までこいつらの音を録っていたんだ」

 そのバンドの写真を見せてくれた。