「ここです」

 令がドアの前に立って鍵を差し込もうとしたが、須尚はそれを止めた。
 大きな一枚板のドアの前で何故か躊躇った。
 数十年振りの再会を前に心が揺れていた。
 鍵穴をじっと見つめたまま動くことができなくなっていた。
 すると、両肩に手を感じた。
 タッキーとベスが笑みを浮かべていた。
 大丈夫だよ、というような優しい笑みだった。
 そしてタッキーに肩を揉まれると、躊躇いがすーっと吸い込まれていった。
 大きく深呼吸をしてチャイムを押した。