須尚正 
 
「父がエンジニアをしているスタジオはどうでしょうか」

 令の提案だった。

 轟からアメリカの録音スタジオを探すように指示されてから心当たりに連絡を入れていたが、借りられるスタジオはまったくなかったし、目処がつかないまま頭を抱えていた時だった。

「あっ、気づかなかった。でも、空いているかな?」

 彼は頷いた。

「2日前に録音が終了したばかりで、次の予定まで少し余裕があるそうです」

 既に彼は確認をしてくれていた。

「ありがたい。急いで押さえてくれるかな」

 すると彼が笑って頷いた。

「大丈夫です。来週から2週間ならOKと言っていましたから」

「本当?」

 彼は強く頷いた。

「助かった。ありがとう」

 万全の対応に心から礼を言った。