特製ハンバーガーで有名なカジュアルレストランに彼を連れて行った。
 店は家族連れで賑わっていた。
 最上が店イチ押しのハンバーガーを2つ注文すると、そんなに時間を置かずに席に運ばれてきた。
 口を目いっぱい開いても入り切らないほどの巨大さに音野は驚きの表情を浮かべたが、それは一瞬のことで、「アメリカならでは、ですね」と嬉々として超特大ハンバーガーと格闘を始めた。
 
 ハンバーガーをやっつけたあと、コーヒーを飲みながら音野の話を聞いた。
 渡米の目的がアメリカ聴音工学研究会に出席するためと知った。

「研究会では骨伝導技術の発表も幾つか予定されています。最上さんも一緒にいかがですか?」

 思いがけない提案にちょっと戸惑った。

「わたし? でも、研究会のメンバーではないし……」

「大丈夫です。共同研究者として申請しますから。参加費はご負担いただくことになりますが」

 どうしようか咄嗟(とっさ)に判断がつかなかったが、そんな様子を見て彼が笑いかけた。

「気分転換が必要です。一つのことだけに集中しすぎると袋小路に入ってしまいますよ」