それから3週間が経った。
 最上はいつものように朝のコーヒーを楽しみ、満ち足りた朝を満喫していた。
 しかし、マウスとラットの観察に出かけていた日本人研究員が顔面蒼白になって戻ってきた瞬間、室内のムードが一変した。
 B誘導体高用量投与群のマウスとラットに異変が起きていたのだ。
 それは想像もしていなかった悲惨な結果で、マウスもラットも突然死していた。

 原因は不明だった。
 しかし、解剖の結果、体のどの部分にも異常がないことが判明すると、一つの仮説が浮かび上がってきた。
 それは、爆音によるショック死だった。
 ほんの小さな音が耳の中で爆音になり、その音に耐えられなくなってショックが起こった可能性が示唆されたのだ。

「まさか聞こえすぎる副作用が発現するなんて……」

 ニタスが肩を落とした。

 聞こえすぎる副作用? 
 そんな……、

 最上は天を仰いだ。

 追い打ちをかけるように、最初の誘導体の1年後の残念な結果が報告された。
 まったく変化がなかった。
 最上はどん底に落ち込んだ。

 あと2年……、
 たったの2年……、

 合弁期間終了の鐘が一気に大きく聞こえ始めた。