翌日、ギターと歌詞カードを持ってキーボーの家に行き、弾き語りで彼に聞かせた。
 彼は両手を組んだ上に顎を乗せて真剣に聴いていた。
 気に入ってくれたかどうかはわからなかったが、足でリズムを取っていたので、駄目出しされることはなさそうだった。

 歌い終わると、キーボーが右手の親指を立てた。
 気に入ってくれたようだ。
 ほっとしていると、彼が立ち上がってマイクスタンドを立てた。

「もう1回歌ってみて」

 ギターを繋いだアンプの前にもマイクを置き、オープンリールデッキを回し始めた。
 弾き語りで歌うと、「しばらく時間をくれるか?」と言って意味深な笑みを浮かべた。