「先ずファーストアルバム、そして、ミュージックビデオ、その次に単独ライヴ、そしてライヴアルバムとライヴDVD、一気呵成に攻めまくります」

 須尚は轟取締役に向かって熱弁をふるった。

 それを頷きながら聞いていた彼女だったが、意外な言葉を口にした。

「麗華ちゃんが心配だわ。世界が急に変わってしまったのよ。日本で一番注目されている女性になったのよ。どのテレビでも報道され、スポーツ新聞や週刊誌、ゴシップ誌にも追いかけられている。まるでアイドル扱い。このままでは精神的に参ってしまうわ。なんとかしなければ」

 そして腕を組んで、窓から見える東京タワーの方を見つめた。

「ファーストアルバムのレコーディングは……日本の報道陣が追いかけてこない海外がいいかも知れないわね。そう、海外がいいわ。須尚さん、海外のスタジオを、どこか環境の良いスタジオを押さえてください」

 須尚はすぐに取り掛かると返事をしたが、心の中では落ち込んでいた。
 REIZのことをビジネスの観点でしか見ていなかった自分を恥じていた。
 売上と利益のことしか考えていなかった。
 デビューする前にあれほど麗華のことを心配したのに、CDが売れ始めた途端、麗華の心身の心配は頭の中から完全に消えてしまっていた。

 何やってるんだ! 

 ビジネス上の繋がりしかない轟でさえこんなに心配してくれているのに、実の父親である自分は最低だと思った。
 底の見えない谷を真っ逆さまに落ち続けるような感覚に陥った。